マイナンバー保険証の運用について
 2023.04.28

2021年10月からマイナンバーカードと健康保険証が一体化となった、「マイナンバー保険証(通称:マイナ保険証)」は皆様ご存じでしょうか。マイナンバー保険証とは、マイナンバーカードと健康保険証を一体化することで、薬剤情報の閲覧や税務手続きが一括で行える様になる新制度です。さらに、従来使っていた健康保険証の代わりに、マイナンバー健康保険証が利用出来る様になります。今回のコラムではマイナンバー保険証のメリットやデメリットを紹介したいと思います。

1.マイナンバーとは?

そもそもマイナンバーとは、一体どのようなものなのでしょうか。マイナンバーについて、基本的なことをおさらいしておきましょう。

マイナンバーカードは2016年1月から交付が開始されました。国民一人ひとりに12桁の個人番号が振り分けられた、役所などの公的な本人確認書類として使えるICカードです。また、わざわざ役所へ足を運ばなくても、近くにあるコンビニで住民票の写し等を受け取れる等、様々な行政サービスが受けられます。他には金融機関等の窓口で必要な本人確認の際にも利用可能です。

2.マイナンバー保険証が導入される理由は?

マイナンバーカードと保険証が一体化される理由とはなんでしょうか。

目的のひとつは、適切な医療を受けやすくすることです。健康保険証の代わりにマイナンバー保険証が利用されると、マイナポータルとの連携により過去の診療や薬剤処方の記録などが共有され、その情報を元に、医療現場の負担軽減や適切な医療を受けやすくするねらいがあります。

3.マイナンバー保険証を利用する時のメリットとは?

具体的にどの様なメリットがあるのか、詳しく確認してみましょう。

①医療機関での受け付けが自動化

病院等を利用する際、受付に並んで長い間待たされたという経験はあるでしょうか。

マイナンバー保険証を利用することで、窓口での受付が顔認証付きのカードリーダーで自動化され、本人確認と医療保険の資格確認がスムーズに済みます。マイナンバー保険証を利用することで、診察までの待ち時間が今までより短くなるでしょう。

また、自動受付なので人との接触も避けられ、感染症のリスクが減ることもメリットです。

②マイナポータル上で健診結果や処方された薬剤の情報を閲覧可能に

マイナポータル上で受信した結果や健診情報、薬剤の処方、医療費の閲覧が可能となります。また、各種データを医師と共有できるようになり、初めて受診する医療機関や薬局でも正確な情報を伝えられる様になります。

③高額療養費の限度額以上の一時支払いが不要

高額療養費の制度では、事前に窓口での支払いが高額になると分かっている場合は、「限度額適用認定証」を事前申請し取得しておくことで、限度額以上の支払いが免除されています。限度額適用認定証がない場合は窓口で一時的に全額を負担し、後日加入している健康保険へ申請手続きをすることで、限度額以上の支払額分が給付されるという仕組みです。限度額適用認定証が取得出来ていない場合の全額一時払いは、大きな負担となってしまいます。しかし、マイナンバー保険証を利用し、情報提供に同意すると、事前申請不要で限度額以上の支払いがその場で免除されるので、急な診療でも安心して受診できます。

④確定申告の医療費控除手続きが簡単に

本人と生計をともにする配偶者や家族の医療費が年間一定額以上になった場合、確定申告で医療費控除の手続きをすると、超えた分の額に対して所得控除が受けられます。しかし、手続きのためには1年分の領収書を管理する必要があり、大変です。

マイナンバー保険証で医療機関を受診すると、医療費通知情報をマイナポータルで管理できます。さらに、マイナポータルとe-TAXを連携させることで、マイナポータルにある医療費通知情報をe-TAXが自動で取得し、反映から計算まで自動入力してくれるので、医療費控除の確定申告が楽になります。

⑤就職・転職・引っ越し時の切り替えがスムーズに

転職や引っ越し、結婚などで保険証が変わる際、従来の健康保険証では勤め先の企業や役所に出向いて、切り替えや変更の手続きをする必要があります。切り替えてから新しい保険証が届くまでに時間を要する場合もあり、その間に医療機関を受診する場合は、窓口で一旦全額支払い、届いた新しい保険証を提示して返金してもらうなどの手間が発生します。

マイナンバー保険証の利用により、保険証の切り替えや変更手続きがなくなり、期間を待たずそのまま利用し続けることが可能です。ただし、保険証の新たな加入や喪失した際の届け出は、従来通りの手続きが必要となるので要注意です。

⑥窓口での支払いが安くなる

マイナンバーカード保険証に対応している医療機関や薬局では、利用すると初診料に加え、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が上乗せされます。医療機関での負担額は3割負担で6円、従来の保険証利用では12円です。薬局ではマイナ保険証利用で3円、従来の保険証利用では9円を負担することになります。少額ではありますが、マイナンバー保険証にすると初診料が安くなるのはメリットになります。

4.マイナンバー保険証を利用する時のデメリットとは?

マイナンバーカードを保険証として利用するときのメリットを紹介してきましたが、様々な情報が記録されているが故に、不安な要素も多いでしょう。気になるマイナンバーカードを保険証利用するときのデメリットも紹介します。

①個人情報漏洩のリスクが高い

裏面に記載される12桁のマイナンバーやICチップに保存されている電子証明書のデータは、個人情報です。もし、12桁のマイナンバーや電子証明書のデータと暗証番号が漏洩してしまうと、マイナポータルで情報が閲覧出来る様になってします。マイナンバー保険証の紛失や、暗証番号が知られない様に十分注意しましょう。

万が一、情報漏えいの恐れがある場合は、24時間365日対応のコールセンターに連絡するとカードの利用を一時停止できるので、すぐに利用しましょう。

※マイナンバー総合フリーダイヤル(無料) TEL:0120-95-0178

②利用できる医療機関がまだ多くない

厚生労働省より、2023年4月からマイナンバーカードの健康保険証としての利用の原則義務化がされましたが、本格運用を開始した医療機関は全体の38.1%に留まっており、利用できる医療機関は限られているのが現状です。マイナンバー保険証に対応していない医療機関では従来の保険証を提示する必要があり、日常的にマイナンバーカードと従来の保険証の2枚を持ち歩く可能性も出てきますので、持ち歩く枚数が増えると、自然と紛失のリスクも高まります。外出する際は、より慎重に持ち物を管理する必要があるでしょう。

③災害時のシステムダウンやエラーの危険

官公庁書類の手配や医療機関の受付など多くのことを、全てオンラインシステムで処理出来ることは大きなメリットですが、逆をいうとシステムの不具合によるトラブルが起きた場合のデメリットも大きいということです。自然災害や何らかが原因でシステムダウンが起きれば、医療機関等での受付や過去の医療データ等も閲覧出来なくなる恐れがあります。

マイナンバー保険証を利用することで、情報漏えいのリスク等のデメリットがあることは確かです。しかしその反面、マイナポータルを活用してご自身の健康管理に役立てることが出来たり、病院の受付時間を短縮出来たりとメリットも多くあります。考えられるデメリットを把握し、マイナンバーカードをしっかり管理して有効に利用しましょう。

本コラムが、皆様にマイナンバー保険証についての“理解”や“興味”を示してもらう一助になれば幸いです。

自治体関係者の方々は、自治体向けサービスとして交付管理システムでの援助も当社で承っています。興味がございましたら、そちらのページもご確認してみて下さい。

参考サイトURL

・厚生労働省Webサイト

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001027461.pdf

※中央社会保険医療協議会 総会(第534回)議事次第⇒(資料名:医療DX 対応について 総-3-P11)

・マイナンバーカードの健康保険証利用について

 ⇒https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000577618.pdf

・マイナポータルWebサイト

https://myna.go.jp/

カテゴリー:KANTEC UPDATE